ちなみに「教師」とTeacherをWikipediaでチェックしてみると、その内容のあまりの違いに驚く。日本文が教員制度を紹介しているだけなのに対し、英文の方は教師の資格、資質、役割などを詳述している。中でも特に重視しているのがCompetenceだ。日本語ではなじみが薄いが、職業人がプロとして自立し、周囲の人たちに共感と挑戦する意欲と勇気を与え、周囲の支持を得て動かす強いリーダーシップを発揮することがCompetenceであり、国連はかねてから、そういう共感・意欲・勇気のある指導力を発揮することを“UN Competency” と名付けて国際公務員の資質として強く求めている。わが「グローバル人材育成教育学会」の英文表記も、その意味を込めて、Global Competency Educationとしている。

そこで英語教師を自分の職業に選んだ以上、そういう「英語の達人」を目指して努力するしかないだろう。明治から昭和にかけて日本の英語教育界を代表する英語学・英文学の泰斗、岡倉由三郎(1868~1936)は、20代の著書は国語(日本語)の専門書であり、日清戦争(1894~95)の始まる前に韓国政府が作った外国語学校の最初の日本語教師として招かれた。30代以降は比較言語学、英語学、英語音声学などの専門家となり、1926年には日本で最初のNHKラジオ英語講座を担当し、研究社の『新英和大辞典』(1927)、『新和英中辞典』(1929)を編集した。その岡倉が常日頃、強調していたのがまさに「英語教育は日本語教育」であり「英語教育は人間教育」だった。それを現代に敷衍すれば「英語教育はグローバル人材育成教育」になるはずだ。その見識を今日の英語教師たちが共有することを切に期待したい。